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2025.08.18

ブランドの原点とスポーツとの連携のきっかけ【前編】

竹村 圭祐

株式会社アーバンリサーチ 代表取締役社長

スポーツのパートナーシップとブランディングをテーマに、株式会社アーバンリサーチ 代表取締役社長 竹村 圭祐に話を聞いた。
竹村社長が感じているファッション業界の変化とアーバンリサーチ社が行ってきたこれまでの取り組みそして原点回帰の背景と狙いについて解説していただいた。

これまでのご経歴と株式会社アーバンリサーチの目指すものについて簡単に教えてください 。

アーバンリサーチは、1974年に大阪で創業し、現在では全国店舗を展開するセレクトショップブランドに成長しました。長年にわたり「すごいをシェアする」を理念に掲げ、単なる衣服の販売にとどまらず、インテリア、アウトドア、スポーツといった幅広い分野と関わりながら、時代に応じた価値を提供してきました。 創業当初、アーバンリサーチは輸入衣料を扱う小規模なショップでした。海外ブランドの魅力を日本の消費者に伝えることを目的とし、世界中から厳選した商品を取り扱うことで、独自のセレクトショップとしての地位を確立し、その後、自社開発のオリジナル商品にも力を入れ、日本国内のライフスタイルに合わせたアイテムを展開することで、より幅広い層に支持されるブランドを目指しました。

私自身は2023年4月、創業者である父から経営を引き継ぎました。幼い頃から会社の成長を間近で見てきたので、長年にわたり経営に携わりながら、時代の変化に対応するための新たな挑戦を続けてきました。ライフスタイルそのものを提案するブランドとして、私たちは流行を追うだけでなく、お客様がより豊かな暮らしを実現できるような価値を提供し続けることを大切にしています。

私たちが掲げる新しいビジョンの一つが、「経験とアクティビティを提案する企業への深化」です。時代の変化に適応しながらも、アーバンリサーチの本質を見失うことなく、ブランドの価値を再定義していくことが重要だと考えています。

また、全国展開を進める中で、どの店舗に行っても同じ体験ができることがブランドの強みである一方で、地域ごとの文化やライフスタイルに応じた提案も必要だと感じています。お客様一人ひとりにとって、本当に価値のある商品を届けるために、スタッフ自身がブランドの哲学を理解し、自身の経験に基づいた提案をできるような環境を作ることが大切だと考えています。

他業界同様にファッション業界も変化が激しいと思いますが、アーバンリサーチはその変化にどのように対応されていますか。

近年、ファッション業界はかつてない変革期を迎えています。デジタル化の進展により、消費者の購買行動が大きく変化し、オンラインショッピングが主流となりつつあります。加えて、環境問題への意識の高まりや、個人の価値観の多様化により、従来の「大量生産・大量消費」モデルでは対応できなくなってきています。アーバンリサーチも、こうした変化に適応しながら、独自のブランド価値を再定義する必要に迫られているのです。

時代の変化に合わせた柔軟な対応が求められますが、ブランドの本質を見失ってはいけません。単に新しいテクノロジーを取り入れたり、流行に乗ったりするのではなく、アーバンリサーチが本来持つ「ライフスタイル提案型のブランド」としての強みを活かしながら、変化に対応していく必要があります。

その一環として、当社ではオンラインとオフラインの融合を強化しています。EC サイトの利便性向上はもちろん、リアル店舗での体験価値を向上させるために、ポップアップイベントや限定商品の販売を積極的に行っています。例えば、店舗では試着だけでなく、スタイリングの提案やライフスタイルに関するアドバイスを提供するなど、デジタルでは得られない体験を提供しています。

さらに、サステナビリティへの取り組みも加速させています。環境に配慮した素材を使用した商品の開発や、リサイクル活動の推進を積極的に進めています。ファッション業界は大量生産・大量廃棄の課題を抱えていますが、これを解決するために当社では持続可能な生産・消費の仕組みを模索しています。

私たちはどんなライフスタイルを提供できるかを考える必要があります。変わり続ける市場の中で、アーバンリサーチらしい価値を追求し、新しい時代のファッションを創り出していきたいと思っています。

竹村さんご自身のスポーツとの関わりはどのようなものがありますか 。

私自身は、プロスポーツを熱心に観戦するタイプではないのですが、アウトドアや乗り物など多様なアクティビティに興味を持っています。一つのスポーツを極めるというよりは、スキーやスノーボード、登山などのアウトドアスポーツが好きです。バイクや飛行機などの乗り物にも興味があります。

また、通勤の手段として自転車を利用することもあり、健康維持の観点からもアクティブなライフスタイルを心掛けています。ジムで運動するよりも、自転車に乗って外を走る方が好きですね。日常の中に自然にスポーツを取り入れるスタイルを大切にしています。 。

アーバンリサーチという会社としてスポーツとはどのように関わっていますか。

過去にはサーフィン大会のスポンサーを務めたり、サッカー選手の移動着を手掛けたりしたこともあります。

これらの活動は、ブランドの認知を広げることにつながってはいますが、それよりも例えば社内のサーフィンが大好きな社員の熱意に応えてスポーツとの関わりが始まったという形です。

スポーツを単なる競技としてではなく、ライフスタイルの一環として捉え、さまざまなスポーツ関連のプロジェクトを手掛けてきました。近年ではeスポーツの分野にも参入しました 。eスポーツは従来のスポーツとは異なりますが、「競技」としての側面を持つ点では共通しています。当社はeスポーツプレイヤー向けのウェアやアクセサリーの提案をおこない 、新たなスポーツカルチャーの中でのファッションの役割を模索しています。。

FC今治とパートナーシップの関係を持っていらっしゃいますが、この関係に至った背景や狙いはどういうものでしたでしょうか 。

きっかけは取引先からの紹介でしたが、私たちとしては露出効果や単にスポーツクラブを応援するというような意図で。FC今治とのパートナーシップを決めたわけではなく、むしろサッカー以外のFC今治の活動に私たちの活動との親和性があると感じたからです。

具体的には私たちがSDGs基本方針として掲げている3C(①Clothing Innovation:衣料資源の有効活用、②Clean Earth:地球環境負荷の軽減)、③Community Building:コミュニティの形成)との親和性です。

例えばアースランドで行っている環境教育活動は Clean Earth の考え方に合致していますし、私たちが目指すClothing Innovationにつながる部分があるので、パートナーとして連携したり活動を広げたりできると感じました。

また、Community Building については私たちも長野の蓼科でTINY GARDENというキャンプ場を運営したり、そこでフェスを行ったりしてコミュニティを広げているのですが、FC今治のホーム戦でも同様に、ファン、サポーターの方もただ試合観戦に来ているだけではなく、彼らのライフスタイルの中でサポーター仲間とのコミュニティが広がっています。

このように、スポーツとしてのサッカー以外の部分で共通点や親和性があり、シナジーを生むことができそうだと思ったことがパートナーになることを決めた要因でした。

3Cについて

アーバンリサーチのサステナビリティ | URBAN RESEARCH Co., Ltd.|株式会社 アーバンリサーチ

後編では、FC今治のパートナー企業として目指すものそしてスポーツの持つ特性がファッションビジネスにどのような示唆を与えてくれるものか、それとどのように融合していくのかについてお話を伺います。

プロフィール

1974 年生まれ。父親である竹村幸造氏(現会長)が創業した株式会社アーバンリサーチに 1998年に入社し、URBAN RESEARCH1号店の販売スタッフからキャリアをスタート。その後、京都店や堀江店、関東初出店時の店長を歴任。さらに、EC サイトや顧客サービスの立ち上げを担当し、2004年には総務部長に就任。事業支援本部長、専務、取締役副社長を経て、2023年4月より代表取締役社長に就任。

株式会社アーバンリサーチ
1974 年に創業した日本のファッション小売企業で、全国に店舗を展開するセレクトショップチェーン。20〜40代を中心に、自社ブランドと国内外のブランドを組み合わせた商品を提供し、「ライフスタイルの提案」を軸にした店舗運営を行っている。ファッションだけでなく、アウトドアやスポーツ、環境問題にも関心を持ち、企業活動を通じて社会とつながる取り組みを積極的に推進している。

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