FC今治とパートナーシップでは具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか 。
私たちはFC今治の選手の移動着の提供を通じて、3CのClothing Innovationを実現しています。
FC今治さんから、「資源を無駄にしない」「ゴミを作らない」移動着にしたいというご要望を伺い、アーバンリサーチの過去の商品の在庫と今治タオルの在庫生地を使ってリメイクした移動着を作りました。もちろん、アーバンリサーチの特色である「快適さ」と「スタイル」も兼ね備えており3C の実現と併せてブランドの価値を体現できるようにしているのです。
Clothing Innovation と Clean Earth に関わる活動として試合会場にエコステーションを設置し、衣類のリユース活動を推進しています。スポーツを通じたサステナビリティの発信につながっています。
FC今治のホームゲームの試合会場ではポップアップショップを展開し、限定アイテムなどを販売することでファンが実際にアーバンリサーチのアイテムを手に取れる機会を提供しています。単なるグッズ販売の一つとしてではなく、ファッションを通じてスポーツ観戦の楽しさをより深める試みを行っています。
スポーツの場でファッションを体験することで、新しいブランドの価値を生み出せるだけでなく、Community Building にもつながっています。観戦後にファン同士が交流できるスペースを設置するなども行っていて、スタジアムを“試合を見る・応援する場”だけではなく、“ブランドを体験する場”としての可能性を広げています。FC今治とのパートナーシップを通じ、スポーツとファッションの融合をさらに深め、ファッションのそしてブランドの新たな可能性を模索していきたいと思っています。
当社が運営する長野県茅野市のキャンプ場「タイニーガーデン」では、アウトドアとファッションの融合をテーマにしたイベントを実施しています。この取り組みも、FC今治のホームスタジアムで展開するプロジェクトとも連動し、ファッションとスポーツの新たな接点を生み出してコミュニティを広げています。
スポーツとファッションの間にはどのような共通点があるのでしょうか 。
スポーツファンとファッションファンには多くの共通点があります。一見異なる分野のように思えますが、両者にはブランドへの愛着や、ライフスタイルの一部としてそれを取り入れる姿勢などの共通項が見られます。
スポーツファンは、チームの歴史や文化に共感し、それを誇りに思いながら応援を続けます。同様に、ファッションファンもブランドの理念や世界観に共鳴し、それを身にまとうことで自分のスタイルを確立していきます。
スポーツとファッションはどちらも“ブランド”という概念を持ち、それに対して忠誠心を持つファンがいます。
また、どちらの分野も「限定アイテム」や「コラボレーション企画」が人気を集めます。スポーツでは、特別な試合用のユニフォームや記念グッズがファンの間で話題になるのと同じように、ファッション業界でもコラボレーション商品や数量限定のアイテムが高い人気を誇ります。このように、どちらの業界も「特別なもの」を求める心理が強く働く点で共通していると思います。
もう一つの共通点は、「コミュニティとしての一体感」です。スポーツファンは、試合会場やスポーツバー、SNS を通じて同じチームを応援する人々とつながり、一緒に喜びや悔しさを分かち合います。一方、ファッションファンも、ブランドのポップアップイベントやSNSを通じて同じブランドを愛する人々と交流し、情報を共有します。
最大の共通点は、このコミュニティが形成されることだと考えています。特に、近年のSNS の発展により、ファッションブランドのファンもオンライン上でつながり、コーディネートを投稿したり、新作アイテムの情報を交換したりすることで、ブランドの価値を広めています。
スポーツとファッションの融合は、このコミュニティの力をより強固なものにする可能性を秘めています。FC今治とのコラボレーションではコミュニティの形成や活性化についても取り組んでいます。
一方でスポーツは「イベント性」が強く、一つの試合や大会に向けて熱狂が高まる傾向がある一方で、ファッションは日常的に消費されるものであり、「季節ごとに新しいトレンドが生まれますが、日常の中で継続して使われるものである点が異なります。
当社としては、この違いをうまく活用しながら、スポーツを「日常の延長線上にあるもの」として捉えた商品開発を行っています。先にお話ししたFC今治の選手の移動着も、その考えの一環です。試合のためだけではなく、日常生活の中で快適に着られるウェアを提供することで、スポーツとファッションの橋渡しが出来ればと思っています。
スポーツとファッションが融合することでどのような新しい価値が生まれることが期待できるでしょうか。
スタジアムには、ファッションブランドにとって新たな可能性があると考えています。これまでファッションブランドは、百貨店やショッピングモールといった“消費の場”で展開されてきました。しかし、スタジアムは“体験の場”であり、そこで生まれる感情や興奮とファッションが結びつくことで、新しい価値を創出できるのではないかと考えています。
実際スタジアムは何か神社のようなものを感じることがあります。人がそこに行きたくなる。そこに行って何かお守りのようなものを持って帰るような。
ネットの口コミを見て観光したり温泉入ったりしたりするのと違って、何か自分自身で非日常を感じて帰ってくるようなものがあると思っています。
ファッションとスポーツは、これまで別の業界として捉えられてきました。しかし、私たちはその境界を取り払い、新しいライフスタイルを提案することで、ファッションの可能性をさらに広げたいと考えています。
FC今治との取り組みでは、スポーツの持つ「熱狂」とファッションの持つ「スタイル」を掛け合わせる試みを行っています。
ファッションとスポーツ、それぞれの持つ特徴を活かしながら、新しいライフスタイルを提案し続けていきたいと思っています。
今後アーバンリサーチさんが目指す未来はどのようなものでしょうか 。
私たちはこれまで「ファッションを通じたライフスタイルの提案」を軸に事業を展開してきました。しかし、これからの時代、ファッション業界は単に衣服を販売するだけではなく、体験やストーリーを提供することが求められます。
特に、当社は近年、スポーツやアウトドアとの連携を強め、ファッションの新たな可能性を探っています。FC今治とのパートナーシップはその代表例です。
また、サステナビリティにも力を入れており、環境に配慮した素材を使用した商品開発や、リサイクル活動の推進を積極的に行っています。FC今治の試合会場に設置したエコステーションもその一環です。これからの時代、ファッションブランドとしての社会的責任を果たしながら、スポーツや地域社会と連携し、持続可能なライフスタイルを提案することが求められています。
私たちは、単に服を売るだけの企業ではなく、ライフスタイルをデザインする企業でありたいと考えています。スポーツ、アウトドア、環境問題といったさまざまな要素を取り入れながら、アーバンリサーチならではの価値を創造し、より多くの人々に新しい体験を提供していきたいですね 。
※8/18 (月) 掲載の前編は、こちら